共助社会づくりシンポジウム in 関西 パネルディスカッション【1】 開催レポート

パネルディスカッション【1】 「共助社会の寄附とボランティア~震災以降の歩みと今後のあり方~」

共助社会づくりシンポジウム in 関西 パネルディスカッション【1】 タイトル
目次

  1. 自己紹介、寄附やボランティアの取組について
  2. 目指すべき共助社会とは
  3. 寄附・ボランティアの広がりについて
  4. 今後の共助社会づくりに向け

登壇者スライド資料

  1. 深尾 昌峰 (PDF形式: 2,032KB)
  2. 実吉 威 (PDF形式: 788KB)
  3. 能島 裕介 (PDF形式: 1,507KB)
  4. 水谷 綾 (PDF形式: 396KB)

パネルディスカッション【1】 ファシリテーター・パネリスト プロフィール

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1.自己紹介、寄附やボランティアの取組について

【深尾氏】

今回テーマになっている阪神・淡路大震災から20年、震災を契機に始まった活動や、震災が転機になっている活動などが多くなっていますので、この20年間を振り返っていただきたいと思います。

共助社会づくりシンポジウム in 関西 パネルディスカッション【1】 実吉氏【実吉氏】
私は、認定NPO法人市民活動センター神戸と公益財団法人ひょうごコミュニティ財団の事務局責任者をしています。市民活動センター神戸は震災後にできた団体です。ひょうごコミュニティ財団は公益財団法人で、まだ設立して1年くらいですが、地域の中で市民が市民活動を支えるコミュニティファンドを作っています。

センターでは、資金の助成ではなく、マネジメントの支援、人のつながりを作ったり、場を提供するといった非資金的な中間支援を行ってきました。しかし、社会の資源や参加したい市民はたくさんいて、巻き込んでいけばもっと潜在的な可能性があるのに、NPO自身も中間支援組織もできていなかった。つなぐ役割が一番弱かったという反省があって、財団を作りました。

財団を作ったもう一つのきっかけは東日本大震災です。20年前の経験で、やはり資金も必要ですし、頑張り続ける市民活動を支えなければならない、被災地のNPOを応援しようと考え、基金という資金仲介をセンターでやり始め、並行して財団を作りました。

センターでは、京都地域創造基金の事業指定寄附というスキームを参考として、共感寄附という事業を3月まで行いました。これは、地域で活躍しているNPOを寄附先のカタログにしたものです。NPOに対する寄附がなされない理由としては、信頼性の観点などで、多くのNPOから選びにくいといったことや、NPOとの接点がないということがあります。認定NPO法人である我々が厳選し、信用保証する。これは寄附者からすると、非常に大きな寄附をしやすいステージになります。今年からは財団で実施しているところです。

この20年間を振り返ると、我々は阪神・淡路大震災以来という言葉を枕詞として全国のさきがけということを言いますが、それはもう古いのではないかと思います。全国ではもっと新しい優れた活動が数多く生まれてきていて、我々が周回遅れになってしまうという危機感をここ10年近く前から持っています。

ソーシャルビジネスという言葉も随分広まり、社会全体の意識や社会的な事柄に対する市民一人一人のものの見方が、随分変わってきています。例えば、職員の募集をすると、全国から若い人の応募がありますし、大きな団体は、ここ2、3年は若い方々をどんどん採用しています。日本経済を回復させることは大事ですが、昔のバブルの頃のような経済に戻る、成長するのは無理だと思います。時代が変わり、若い人の価値観も変わってきており、社会的な活動にも重きが置かれてきていると思います。

寄附やボランティアに対する意識は変わってきていますが、それを十分に活用できていない。NPO自身がもっとイノベーションをしていかなければならない。特に中間支援組織が最もそれを求められていると思います。

今後20年について考えると、格差がもっと厳しくなり、階級のようなものが固定化する社会になり、生活のリスクが大きくなっていくのではないか。このような暗い、ネガティブなことが出てくる中でも、一人一人、自分はこれが幸せだということを探すことが大事で、NPOやその他のアソシエーションなどをもっと強く作らなければならないと思います。

我々は、市民が参加することにもっと重きを置かなければならない。NPOや受益者がいて、目の前に課題があって、それをサポートすることがもちろん原点で一番大事ですが、多くの市民の理解や共感を得て、彼らを巻き込んでいく新しい活動が出てきている中、中間支援組織が現場の団体と市民・社会をつなぐ役割をもっと担う必要があります。中間支援組織自身がイノベーションを求められています。

共助社会づくりシンポジウム in 関西 パネルディスカッション【1】 能島氏【能島氏】
大学に入学直後、家庭教師サークルを作ったのですが、その翌年に阪神・淡路大震災が起こり、サークル活動を活かして子供たちに勉強を教えるボランティア活動を行いました。この時、全国から集まった多くの大学生に呼びかけて、家庭、病院、避難所などに派遣して子どもたちに勉強を教えたり、キャンプなどの野外活動なども展開するようになったのが私たちの団体の最初の活動です。その後も、事務局も職員もいない、学生のサークルとして活動し、自分が卒業後も後輩が団体を引き継いで続けていましたが、活動が大きくなりサークルでは厳しくなったので、1999年に事務所を開設し、私は卒業後、金融機関で働いていましたが、戻って職員となり今のような活動になりました。

2000年には兵庫県より認証を得て、学生主体としては初と言われるNPO法人になりました。私たちの活動の特徴は、学生を主体としている活動が、20年にわたって継続している点です。今、950人の学生ボランティアが活動していますが、勉強を教えるといった活動だけでなく、理事の過半数が学生で占められているので、組織の経営や財務管理も学生が行っています。職員の採用面接も学生が行い、また、職員の給料も学生が決めています。

私たちは、子供たち、若者、青少年に多様な価値を提供して、彼らが多様な選択肢をもつことができるような社会を理想として掲げています。

活動としては、最近行政からの委託事業が非常に増えています。我々の事業費用は受益者負担でしたので、例えば生活保護世帯の子供などは費用負担が困難なためにこれまでアプローチできませんでしたが、行政から、そういった子供たちへ学習支援が行われることで、アプローチがしやすくなったと思います。また、学校との連携も進んでいます。

私たちの事業のほとんどは受益者負担で行われているので、NPOの財政の面で考えると、自主財源比率、事業収入の比率が高く、安定的に経営をしていますが、一方で、負担ができない層の子どもたちに対して今までなかなかサービス提供できなかったところ、学校という場は様々な背景・状況の子供たちがいますので、そういった子供たちにアプローチするためには、学校での活動は非常に有意義だと思います。

また、最近は色々な新規事業を展開していまして、全て学生たちが立案して実施しています。例えば、生活困窮世帯の子供たちに学校外教育バウチャーと呼ばれるクーポン券のようなものを提供し、それを使って地域の塾やスポーツ教室、習い事に使える仕組みを、公益社団法人を設立して導入しています。その大半は寄附収入であり、今年の1月に公益社団法人になってからは特に企業からの寄附の申し出が相次いでいる状況です。やはり、とりわけ経済的に厳しい状況にある人へサービス提供をする場合、受益者負担では非常に困難なことから、これを担保するために寄附を募っていくことは非常に有効な手段です。

この取組の中では新しい寄附の考え方を提案していて、一つは、直接受益者を支援する仕組みです。例えば、団体に寄附するとその大部分がバウチャーとして直接子供たちに渡され、残りが授業費や管理費に充てられるといった仕組みです。団体に寄附することも重要ですが、厳しい状況にある生活保護世帯の子供たちや、被災した子供たちに対する寄附ということを財務的にも明確に示せることがこの仕組みの重要なポイントです。

もう一つ、新しい寄附の取組として、複数の被災地で、特に子供たちの支援を行っている団体とアライアンスを組んでファンドを形成し、被災地の子供たちを支援するための基金に寄附をしてくださいという呼びかけをしています。一つの団体だけでは信頼性を担保できないような場合、アライアンスを組んで複数の団体として一つのテーマに対して取り組むことで、信頼性や透明性も確保しやすくなると思います。

阪神・淡路大震災からの20年を踏まえると、私自身は、兵庫・神戸は他の地域と比べて少し違うと思っています。震災以前はボランティアをするのは特別なことと思われがちでしたが、今では学生たちの日常の中に普通の活動として取り入れられて、ボランティアに対する意識の垣根が非常に低いものになっていると思います。

一方で、震災当時のリーダーが20歳年をとり、組織の高齢化は否めないと言えます。中間支援組織は重要な役割を果たしますが、経営が困難な状況にあります。また、未だに補助金や助成金に依存しているNPOも多い。さらに、革新的、イノベイティブな団体が神戸、阪神間でなかなか生まれてきていないというのも大きな課題だと思います。

共助社会づくりシンポジウム in 関西 パネルディスカッション【1】 水谷氏【水谷氏】
大阪ボランティア協会は1965年にできた団体で、「参加」にこだわった市民活動の中間支援を49年にわたって行ってきました。阪神・淡路大震災の時は、2万人のボランティアコーディネーションを行いましたが、私は震災を機に企業からNPOの世界にキャリアを変えてきた転職組です。ボランティアスタッフと協働しながら様々な事業を実施しています。

NPO法人に期待される役割は、人と人との新しいつながりを作ることだと思います。様々な価値観や生き方がある以上、新しいつながりを生みだすための触媒としての役割が期待されています。

世論調査を見ると、社会貢献活動に関心がある方は6~7割程度いると言われますが、実際にボランティアに参加しているのは3割弱程度、残りの3割は関心があっても結果として参加できていないという状況です。参加する理由は自己啓発や成長、やりがい、楽しみ、生きがい。自分を見出すための何かが違う場所・やり方でできるのではとの期待。もしくは困っている人を何とかしたい、そこに関わることによって自分も励まされるといったことが多い。一方、参加できない方は、時間、負担、情報が足りない。しかし、これらも色々なチャネルの作り方によって本当は解決できるかもしれない。その解決策を提案するのが、中間支援やNPOに託されている役割だろうと思います。

私が活動していて、地域社会で強く感じるのが担い手不足です。一生懸命活動していても、そこになかなか光が感じられない。例えば介護や福祉を支えてきたのは中高年の女性でしたが、そうした方々が老齢期に入ってしまい人がいないという危機感を持っています。行政も様々な形で地域を変えようとしているが、肝心の人がいない。NPO法人もボランティア参加が非常に弱いと言われています。一方で、新たな創造によって、活発かつ新鮮な活動を展開している団体もこの関西で生まれつつあり、このようにいきいきと動いている組織に若い人や活発な人が集まっている状況です。

ボランティア活動は、やりたいという「想い」と実際に「できること」、社会の「ニーズ」の3つが折り重なったところに、自分たちの活動の根を見出していきます。そこにうまくチャネルを作っているところが非常に成功しています。そうした団体の特徴は5つ程度あると考えています。それは、【1】参加対象を絞り込む、【2】メッセージやストーリー、【3】ともに夢を見ようとするストーリー性、【4】ゴールを示すこと、【5】ステップアップ、成長する姿がイメージできること、であり、これらを組み込めているところは、寄附もボランティアも両方引き寄せられるような魅力と活力を持ち合わせていると思います。

今やボランティアは普通になってきていますが、必ずしも皆が寄附やボランティアを行っている社会ではありません。しかし、人というのは、お金や人、情報やつながりを引っ張ってくる可能性があり、それを絶対にあきらめてはいけません。我々はこの可能性に対して、もっと仕掛けを講じなければならなかったにも関わらず、目の前のことに追われて、自分たちが本来やるべき仕事を見失っていたというのがこの20年を振り返った時の大きな課題です。

家、仕事に続いて、ボランティア活動は第三の場であり、21世紀の社会では、様々な世代が第三の場所や第三の自分を求めているのではないでしょうか。その第三の場に引き寄せられた時に、ターゲティングや夢、ゴール、成長などについてもっと考えていかなければならないと感じています。

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2.目指すべき共助社会とは

共助社会づくりシンポジウム in 関西 パネルディスカッション【1】 深尾氏【深尾氏】
共通のキーワードは、ボランティアや寄附が、社会に参加するツールであり権利だということでした。では、これから10年、20年、30年、という未来を考えた際に、人口減少や担い手不足などの問題から、私たちの今の社会の構造を転換していかざるを得ない時に、共助社会や参加ということがどういう意味をもつのか、共助社会は共に助け合う社会ですというのだけではなくて、もう少しその点を豊かに語った上で、寄附とかボランティアの話をする必要があるのではと思っていますが、どうお考えですか。

【能島氏】
ここ数年、急速に様々な社会課題が深刻化しているのは間違いありません。これからの社会課題を考えた時に、都市問題やイノベーション、人口減少問題などは、従来は行政に代表される「公」と「私」で峻別されていましたが、加速度的に課題が大きくなり、特化されるにつれて、市民自身も行政がやることと言っているような状況ではなくなってきています。私たちの世代からしたら他人ごとではないということです。社会の深刻な様々な課題から恐らく逃げ切れない世代なので、それらを我が事として捉え、深刻さを持ちながら社会に関わっていくことが共助社会の流れとして必要なのではないかと思います。

【実吉氏】
市民にとっていかに幸せに生きるかということが重要だと思います。規制緩和や自由な経済活動はあった方が良いと思いますが、例えばITなど、親が使いこなしているかどうかで子供が使えるかどうかに差が出ます。これは経済格差ともリンクしていますが、便利で自由になっていくことの影の面が出てきて、それは個人の努力では乗り越えられないものもあります。人がどう助け合って自分の居場所や活躍の場を作っていくか、という意識が共助社会の展望や我々の活動の中には不足しているのではないかと思います。

【深尾氏】
持続性を高めながら違う角度から私たちの暮らしや自治などを考えていくとなると、例えば、高齢化していく中で、何故これだけお金を貯めこまないと不安なのかといったようなことも背景にはあるかもしれませんが、いかに幸せに生きるか、共助社会ということを議論する時には、そういった今までの幸せな形や社会のあり方を疑っていかなければならないということは、なんとなく皆さん気付いているのではないでしょうか。わかりやすく言うと、財政面では半分が借金という構造をどう超えていくか、社会のあり方などの指針・目標として共助社会を豊かに語っていくことは非常に大事なのではないかと思います。

【水谷氏】
今までのあり方を疑うということはとても大事だと思います。一方で、共助社会を考える時には、従来の仕組みを尊重しながら、新たな仕組みをもう一つ加えていくという様々な取組や関わり方も必要です。公務員の人がもっと地域に出て行って、ボランタリーに何かできないかといった人材流動化の話や、今あるものも大事にしつつ、新たな枠組や取組にチャレンジすること、今までのあり方を疑いながらも、それらが培ってこられた事情や背景も尊重する、その両面がないと社会が受け入れてくれないのではないかと思います。

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3.寄附・ボランティアの広がりについて

共助社会づくりシンポジウム in 関西 パネルディスカッション【1】 様子1【実吉氏】
潜在的に寄附をしたいと思っている人の割合が7~8割でありながら、実際に寄附をしている人は2割程度です。この巨大なギャップの原因は何かというと、NPOの側が求めておらず、努力不足が大きいと思います。この点は中間支援の中でももっと訴えていかなければいけません。そのメッセージも出し方に色々ノウハウがあるので、バージョンアップをしていくことが重要です。

ただ、個々のNPOの努力だけでなく、寄附する側から見て選びやすいようなスキームが無いと思います。ローカルコミュニティの中で、顔の見える関係を作りながら、あのNPOの活動って地域で絶対に必要だよねと評価してもらい、寄附していただくための選択肢をどう作っていくかが重要ですが、これは個々の団体でアピールすることも大事ですけれど、中間支援組織がここは大丈夫ですよと信用保証をして、選択肢を絞るということで、寄附者側から見ると寄附をしやすい仕組みとなると考えています。焦点や金融機関の店頭に置いていただくなど、市民がアクセスする所にNPOを露出して接点を作ることが極めて大事だと思います。

【深尾氏】
そういう意味では、NPO村やボランティア村といった、壮大な村社会だったのではないかと思います。どこに行っても、同じような人たち、同じような集会、法人格が違っても同じような人たちが集まってくるということで、本当にこの20年間で裾野が広がったのか、それとも20年分だけ歳が増えただけなのでしょうか。中間支援組織として携わってきた者として反省すべきことは何なのでしょうか。

【水谷氏】

中間支援組織として本当にNPOに伝えなければならないメッセージという意味では、社会課題への参加の道を開くことがNPOの最大の役割ですということだと思います。そのためにボランティアや寄附、行政との協働、企業のCSV(Creating Shared Value:共通価値創造)といった選択肢を提示すべきでした。これらをしないということは、参加の道や解決したい社会的使命の道を自ら閉ざすことになるのだというメッセージを、これまで強く訴えることができていなかったのではないかと思います。

【能島氏】

自分たちの団体の活動の広がりや発展、存続に力を入れる結果として、新たな競合団体が生まれることに対し、積極的にとまでは言わないまでも、阻害したり邪魔したりしていないかということに気を付けなければならないと思っています。イノベイティブな団体や事業が生まれてくる背景としては、非常に自由で闊達なマーケットのようなものがその地域に存在していることが挙げられます。お互いの足の引っ張り合いではなくて、お互いが適度な距離を保ちながら、緩やかなつながりを持ちながら、自由闊達に切磋琢磨できるような場みたいなものがマーケットとして生まれると面白いのではないでしょうか。

【深尾氏】
課題がきちんと見えるような自由闊達な場づくり、またそれに対して離合集散ができ、様々な社会にある力を引き出せるような、共助社会の場のようなものが重要です。

お金の流れを見ても、例えば、信用金庫は地域でお金を集めて地域の企業にお金を貸し出す金融機関です。しかしながら、信用金庫の貸与率はこの15年で20%下がり、その分地域にお金が回らず、代わりに国債に流れているという状況です。人の力を見ても、担い手不足と言われる一方でボランティアをしたい人もいます。共助社会という社会像を打ち出す時にはこれらをうまくつなげていき、今あるものを活かすということが大事だと思いました。

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4.今後の共助社会づくりに向けて

共助社会づくりシンポジウム in 関西 パネルディスカッション【1】 様子2【深尾氏】
地域社会や私たちの暮らしを維持したり、より良いものにしていくということを考えると、行政依存型・消費者型の市民の姿から脱却しながら、公と私の境のようなもの、公私混同型の取組というようなことかもしれませんが、そういうものにシフトしていく必要があるのではないかといったことが見えてきたのではないでしょうか。

我が国の寄附税制は世界でも有数の制度となっており、どう使うかというのは私たちに委ねられています。そういう中で私たちがしなければならないことについて、共助社会という文脈の中での休眠預金の活用方法等も含めて、メッセージを出していきたいと思います。

【水谷氏】
ボランティア活動というのは、市民の自由な社会貢献活動ですので、その自由さは奪ってはいけません。行政の関わり方や、語りかけ方というのは大事だと思います。ボランティアは人ですから、行政には、丁寧に言葉を選ぶといったことを考えてほしいと思います。

双方の意識改革の話をすると、NPO自身が自分たちの活動について打ち出していかないと相手は来てくれない時代の中で、NPOがどう関わり、提案していけるかが問われていると思います。また、行政や企業とコラボする際にも何が提案できるかということも問われています。また、休眠口座の活用といった新たなお金の動きが出てくる時には、市民の自由な活動を更に発展させ、支えるという意味では、自由な活動ができる場や機会、交通インフラのような基盤整備の部分に対する、公的機関の応援や基盤の保証、提供が重要になります。若い人は非常に忙しいため、同世代間で支え合うということも地域では必要になります。その際に非常に大事なのは、つながりあう様々な「場」です。一から資金調達するのは大変なので、固定資産に関することなどハード面でもどう支えられるか、また、そういうものも休眠口座が支えるのかといったことも含めた議論ができればと思います。

【能島氏】
20年を振り返って言うと、どう資金面を支えていくのかが重要と思います。単に助成金を出すのではなく、融資をしてほしいと思います。そういった制度基盤の整備や、また、中小企業支援の枠組がボランティアやNPO、ソーシャルビジネスに相当程度活かせるのではないかと思うので、その法制度を見直してほしいと思います。

【実吉氏】
優れたNPOがもっと出てきて活躍することは良いことであり、こういう環境をもっと作っていかなければならないですが、逆に各コミュニティで、NPOだけではなく、企業や商工団体、行政、地縁団体等とともに、これからの地域をどのように作っていくかということを、皆で考え、場を作っていかなければならないと思います。そういう中で我々中間支援組織も、優れたNPOをどう生み出すかだけでなく、人をつなぐといったシンクタンク的な役割を果たしていかなければなりません。

また、休眠口座については、お金をばらまくことがNPOを育てることには決してなりません。むしろそれをどう使うか、その大きなビジョンをNPO側の提案を促しながら考えてほしいと思います。ただし、休眠口座は大きな話であり、これからの日本の50年、100年を作るようなインパクトすらあるので、大事に議論をしていっていただきたいと思います。

【深尾氏】
地域の課題は地域によって全く違い、紋切り型の語り方には限界が来ていて、地域の課題をその地域の皆で共有しながら持ち寄れる関係性や場をどう作るのかが重要です。

また、NPO側や中間支援組織の努力も非常に大事だと思います。寄附については、使い方よりもその成果が問われており、この寄附で本当に社会が変わるのかというところを寄附者の方々は見ておられます。良いことをしているから良いのだという理屈ではなく、自分たちの活動がこのように未来につながっていく、課題解決につながっていくということを、寄附やボランティアという資金的、人的な投資や信託を受けて活動するNPOとしては、きちんと社会に発信をして、より好循環を作っていくことが非常に重要なのではないかと思いました。

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