共助社会づくりシンポジウム in 関西 パネルディスカッション【2】 開催レポート

パネルディスカッション【2】 「ソーシャルビジネスの現状とその可能性について」

共助社会づくりシンポジウム in 関西 パネルディスカッション当日の写真

目次

  1. 自己紹介、ソーシャルビジネスとの関わり
  2. 参加者からの質問
  3. ソーシャルビジネスの発展可能性や課題

登壇者スライド資料

  1. 小倉 譲 (PDF形式: 254KB)
  2. 久保 幸一 (PDF形式: 1,224KB)
  3. 髙津 玉枝 (PDF形式: 872KB)
  4. 中村 順子 (PDF形式: 580KB)
  5. 森田 拓也 (PDF形式: 508KB)

パネルディスカッション【2】 ファシリテーター・パネリスト プロフィール

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1.自己紹介、ソーシャルビジネスとの関わり

【山内氏】
ソーシャルビジネスに厳密な定義はありませんが、社会的な課題解決を主たる目的とした活動、自律的な安定財源と組織を持った継続的な事業、革新性の3要素があるものと言われています。個人的には、営利的な側面と非営利的な側面を持っているという意味でハイブリッド性を付け加えたいと考えています。

それぞれの立場で、活動内容や課題、その克服方法について発言をお願いします。

共助社会づくりシンポジウム in 関西 パネルディスカッション小倉氏の写真【小倉氏】
ソーシャルビジネスは、好きなこと、出来ること、社会に必要なことの3つが交わることが必要です。私の経験からお話しすると、介護が必要な祖父と旅行に行きたかったのですが、酸素吸引が必要だったということもあり旅行会社から断られたため、自分で連れて行ったところ、その祖父が階段を自力で上がったり、長時間立ったまま話ができたということがあります。これを見て、旅行は心が元気になり、心の改善は体のリハビリになるのではないかと。なぜこのようなサービスが無いのか、無いのであれば自分でやってしまおうと考え、NPO法人しゃらくを立ち上げました。

事業を始める時にニーズ調査を行ったところ、63%が旅行に行きたいとのことで、これはビジネスとして成り立つと判断してスタートしました。しかし、ここに大きな壁があって、高齢者が何かをする時に判断をするのは本人ではなく、その周りのケアマネージャーや看護師、ドクターであり、家族の意見も大きいのです。彼らが無理と言った瞬間に諦めてしまうということに、私たちは最初苦労しました。

私たちのターゲットは、主に要介護やターミナル期の方、人工呼吸器を使っている方です。私の祖父のような状態の方は旅行会社のサービスの射程距離からこぼれ落ち、お客さんの範囲に入っていなかったのです。また、介護保険法の制度でも祖父が旅行に行くことは認められておらず、サービスにしても制度にしても、必ず射程距離があり、そこから零れ落ちる人たちが世の中にはたくさんいます。そこをフォローしていくのが、ソーシャルビジネスの活動の範囲ではないかと思います。

私たちは、御本人を含めた関係者へのヒアリングと身体的アセスメントを行い、旅行の移動・宿泊・食事に関する手配や現地でお手伝いいただく方を手配したり、登録があるヘルパーや看護師に旅行の付添をいただくという一連の流れをサービス事業として行っています。

また、私たちの事業はオーダーメイドの旅行がメインですが、パック旅行や価格帯の低いツアーも販売しています。地域でアンケートを行ったところ、約3割の高齢者が引きこもり思考であるという結果が出ました。介護保険法の中のリハビリは毎日同じことをするのでつまらないから行きたくないという方が圧倒的に多かったのです。これも制度の限界と思い、ビジネスとして低価格帯のツアーを販売しています。このように旅を通じてコミュニティを作ることによって、いわゆる無縁社会といった社会的課題を解決していくことができたら良いと思っています。

共助社会づくりシンポジウム in 関西 パネルディスカッション 高津氏の写真【髙津氏】
私どもはフェアトレードを中心に事業を行っています。 世界を見ると、行き過ぎた市場経済主義の結果として大きな事故が起こったり、貨幣経済が入ってきた結果、食べ物を全て売らざるを得なくなり、家族が離散して人身売買につながるといった貧困の現状があります。そこで、私たちが買い物を通じてできることを考えた時、貧困な地域の人たちに物を作ってもらって、それを売る場所を作れば何とかなるのではないかと思ったのが、事業を始めたきっかけです。

株式会社福市を立ち上げた2006年当時、フェアトレードの認知度はわずか3%で、流通業の中でもフェアトレードに取り組んでいるところはほとんどありませんでした。最初に出店したイベントでは散々たる結果で、かなり厳しい時代を過ごしましたが、努力してイベントも重ねた結果、2012年の同様の調査では認知度が25%くらいになっています。

また、2012年には百貨店に常設店舗を出すことができました。フェアトレードを知っていて、商品を買いたいと思うけれども買わない理由の50%以上が、近くに店がないということなので、身近なところに店を作らなければ、いくら理念だけを声高に言っても広がらないということで、この出店にこだわりました。また、流通業の方にフェアトレードについて知っていただいて、一緒に取り組みたかったということもありまして、少しずつですが広がっていると思います。

東日本大震災が発生した際に、自分もできることとして、フェアトレードの考え方を被災地に持って行くことを考えました。途上国と被災地には、仕事が無い、寄附が先行して人間としての尊厳を保つことが難しくなる、弱者に手が届かないといった多くの共通項があります。そこで、被災地に仕事を作ろうと、「EAST LOOP」というプロジェクトを立ち上げました。商品を被災地の方に作っていただき、世界で販売するという取組です。被災した方々が自分で仕事をして、商品が評価され、誰かに認められることで、多くの方から前を向いて歩いていく力ができたと言われました。現在は、このプロジェクトを現地の方々が自分で運営できるように、法人を作り継承しているところです。このプロジェクトで得たお金は、寄附ではなく、自分で稼いだお金です。これほど尊厳を取り戻せることはないのではないのでしょうか。

【山内氏】
フェアトレードは、行き過ぎた自由貿易・グローバリズムに対する解決策として出てきたものですが、重要なことは、フェアトレードも市場を使っているということです。発展途上国と先進国との間が物の売買という市場としてつながっていることこそが、まさにソーシャルビジネスという所以なのです。

ソーシャルビジネスを始めたり続ける際には、資金的な問題が必ず出てきますが、金融機関の立場からはどういったサポートをされているのでしょうか。

共助社会づくりシンポジウム in 関西 パネルディスカッション久保氏の写真【久保氏】
日本政策金融公庫は100%出資の政策金融機関で、私の所属する国民生活事業は小規模企業やソーシャルビジネスなどを創業される方に融資する部署です。特徴は、一件当たりの平均金額が民間金融機関の10分の1以下と小口で、従業員も少ない企業に無担保で融資するということです。民間金融機関が小規模企業に融資をしづらい理由としては、財務面のデータが蓄積されていない、十分な資産がない、融資が小口である、リスクが高い、審査に事務経費がかかりすぎるなど、採算が取れないということがよく言われます。ソーシャルビジネスについても、財務データや資産が少ない、小口融資であるといった課題が、小規模企業と重なる部分だと思います。私たちには長年の小規模企業への融資ノウハウがあるので、ソーシャルビジネスに対しても融資することができ、社会起業家支援として多くの方にご利用いただいています。

ソーシャルビジネスの課題としては、資金調達や収入、人材獲得・育成などが挙げられます。阪神・淡路大震災の時に立ち上げられたNPO法人から相談がありますが、後継者を含めたマネジメント人材育成が課題になっていると考えています。資金については、寄附金や補助金・助成金、融資といった様々な資金調達方法がありますが、それらをうまく使い分けていないと感じます。創業期や安定期などの時期、使いやすさなどで、方法を使い分ける必要があると思います。さらに、事業計画や会計基準の強化などが大きな課題になってきます。

また、私たちはソーシャルビジネスとNPOの創業・経営相談会を行っており、融資についてだけでなく、事業計画や資金計画、組織運営など様々な相談をお受けし、金融機関が持っているノウハウ・スキル・知識等を活用していただけるようお手伝いをしています。

このほかにも、コミュニティビジネスやソーシャルビジネスなどを市民の方に理解していただく取組を行ったり、行政や中間支援組織、中小企業支援機関、金融機関などが集まる神戸ソーシャルビジネス円卓会議の中で、ネットワークを組んで地域でソーシャルビジネスを応援するということを行っています。

【山内氏】
金融機関の役割は、融資するだけではなく、経営指導やコンサルティングとセットになっているということが一つのポイントだと思います。また、融資を受けるためには事業計画をしっかり作らなければならず、返済をしていかなければならないという緊張感が生まれると思います。

共助社会づくりシンポジウム in 関西 パネルディスカッション 中村氏の写真【中村氏】
20年前の阪神・淡路大震災をきっかけに、水汲み110番ということで団体を立ち上げましたが、1年もするともっと様々なものがほしいという要望が出てきまして、命も残って元気が出てきたのだから、自分自身が町のために何か貢献できるというステージがないと、被災地がスポイルされるという不安に襲われました。被災者として助けられる側から助ける側に転換しようと言うべきだと思い、「あなたは地域のために何ができますか」と問いかけて回ったのが今の中間支援の始まりです。中間支援という手法で、復興に係るサービス団体を、被災者を中心にたくさん作ることをミッションとし、CS神戸を立ち上げました。

私たちは自立を一番大事にしていますが、そのまま進むことで孤立したり孤独にならないよう、自分ができないことは誰かの助けや強みを活かし、弱みをカバーし合う、共生という概念も忘れてはいけません。自立と共生を基本として、住民の方々がその町の中で自分の居場所や社会的な役割を得られるよう、総合的に支援することを思い立ったのです。

総合支援なので、人、物、金、情報などの応援をするのですが、CS神戸の活動としては、中間支援を一番大きな柱としています。しかし、特定非営利活動促進法ができる前から、行政の支援がない中で活動しておりましたので、中間支援だけでは経済的に存立しないことから自らの事業も行っており、これがソーシャルビジネス、コミュニティビジネスにあたるかと思います。

中間支援としては、起業や運営の支援を行い、また、人材育成・各種研修を通じて、これまでに多くの方々がコミュニティビジネスやソーシャルビジネスに従事しています。それから、市民活動サポート基金として助成金支援も行っています。さらに、自分たちの存立のための中核事業として、イノベーションを組み込んだ指定管理者事業を行っており、市民の方を講師にする講座を開講したり、障害者や高齢者も働ける場を準備しています。

2011年に行った神戸市内のNPO法人の実態調査の結果を見ると、当時の680法人の総収入が全体で81億円、1団体あたり1,500万円ですが、これは両極端ありまして、300万円以下が51%、1,000万円以上が42%となっており、今もこの両極化の構造を残したまま成長していると思います。会費収入及び寄附金を見ると、10.3億円集めており、これはNPOの顔や活動、寄附の行き先が見え、使い方に共感を覚え、効果を寄附者が実感できることが、多額の寄附に結び付いた結果だと思います。私たちCS神戸も認定NPO法人になり、企業寄附が増えてきています。街づくりとしての人の賑わいづくりの事業などを一緒にやろうという特定の寄附が多いです。新しい形の寄附が増えているので、もっと多額になる可能性を秘めていると思います。

次に、インキュベーションということで、コミュニティビジネスの応援をしておりまして、県からは、場の提供と専門相談員の費用について助成を受けています。特に専門性の高い相談となると、このような場と人がないと事業が生み出されません。このような場で生まれた団体・人たちが、高齢者、身体障害者、まちづくり、環境、非常にニッチなニーズといった地域の課題にもチャレンジしています。今後は、市町村が実施する事業が増えてくるので、市町村ごとにこういった場が整備される必要があると思います。

共助社会づくりシンポジウム in 関西 パネルディスカッション森田氏の写真【森田氏】
今年3月まで神戸市のコミュニティ政策関係全般とNPO施策全般を担当していました。私自身としては、阪神・淡路大震災の直撃を受ける中でボランティア元年という言葉を実感し、その後NPO法ができて、NPOが活躍する時代となりますが、自分もNPOの経営に参画しなければわからないだろうと思い、市民の皆さんと一緒に1999年にしみん基金・こうべという助成事業を行うNPOを作り、さらに昨年にはオール・アバウト・サイエンス・ジャパンという先端医療・科学の啓蒙や難病患者団体等の支援を行うNPO法人を作り、オフィシャルな仕事の傍らNPO活動を2つ行っていました。

神戸市のソーシャルビジネス推進策を御紹介しますと、平成22~24年度まで関係者を集めてソーシャルビジネス円卓会議を開催し、各機関が持っている支援策のメニューを一覧にしたパンフレットの作成や、額は小さいですが助成を行っております。さらに、これから起業しようとする方の具体的な経営相談に応じられるよう、専門家による相談会を実施しています。

ソーシャルビジネスは、どちらかと言うと東京方面からブームの波が押し寄せてきたので、円卓会議では、関係機関とソーシャルビジネスに係る既存の支援策や先行事例など、様々なことを話し合い、その後、具体的な施策に結び付けていきました。

中小企業やベンチャービジネスは立ち上げ時から全速力で走り出すイメージですが、ソーシャルビジネスはすぐには収益が上がらないことや、社会的に認知されるまでに時間がかかることから、立ち上げ時に辛抱強い努力が必要だと考えています。円卓会議では、準備・創業期、発展期、安定期の3段階に分けて、各段階ごとの的確な支援を検討しました。

また、ソーシャルビジネスを市としても認知しているという証拠になるように、ソーシャルビジネスマーク認証制度を作ったのですが、これは、一つは、事業開始から概ね3年経過し、今後成長が期待される初期の事業、もう一つは、発展段階のスタートアップ事業として、ビジネスモデルとして確立され安定的に取り組まれている見本となるような事業をモデル事業として認証するというものです。

共助社会づくりシンポジウム in 関西 パネルディスカッション山内氏の写真【山内氏】
ソーシャルビジネスの活動に行政がどのように関わるのかは、距離感が非常に難しいと思います。直接ではなくて、できるだけ間接的な支援策、情報提供や認証などを中心にやられていることがわかります。

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2.参加者からの質問

  • 共助社会づくりシンポジウム in 関西 パネルディスカッション。参加者からの質問を受けているの写真神戸市が行政としてソーシャルビジネスに対する今後の施策の展開として考えていることがあれば教えてほしい。
  • ソーシャルビジネス事業者から見て、行政の支援についての要望を教えてほしい。
  • フェアトレードの取組について、東日本大震災があった1年間は話題性があり顧客がいたと思うが、時が経つにつれて話題性が無くなり、商品が売れなくなるのではないかと思う。商品を持続的・効果的に売る方法としてどのような工夫をされたのか教えてほしい。
  • ソーシャルビジネスを立ち上げる時に専門的なノウハウが必要になると思うが、法制度について、また勉強会の開催などで日本政策金融公庫の取組があるか教えてほしい。

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3.ソーシャルビジネスの発展可能性や課題

共助社会づくりシンポジウム in 関西 パネルディスカッション様子。参加者がパネルディスカッションを聞いている写真。【山内氏】
参加者からのご質問に対する答えを含めながら、ソーシャルビジネスの発展可能性や課題について、お話いただければと思います。それでは、よろしくお願いします。

【小倉氏】
震災の時など、売り上げが半分くらいに落ちたとしても、仲間には当然生活があります。経営者としては、お金が途切れることは許されません。課題としてはやはり、財政面がかなり貧弱だということだと思います。

今後10年、20年先に何をしていかなければいけないのかと考えた時、私たちは一つのモデルになりたいという気持ちが強く、そのためにはビジネスとしてしっかり確立することが必要と考えています。既に私たちは他団体に無料でノウハウの提供をしています。私たちが経済的に成り立っているので、自分たちにもできると思ってもらうということです。加えて、仲間のライフスタイルに合った成長をどう捉えるかが重要と考えています。給料をずっと固定していては、良い人材が残らないのは当たり前です。しかしながら、NPOの中ではそのような認識が当たり前ではないという問題であり、その解決が私自身の一つのライフワークであり、挑戦していく必要があります。

今後、行政や金融機関にお願いしたいのは、実績の有無ではなく、志で判断してどのように資金を調達できるのかを真剣に考えてほしいということです。財政難で、いわゆる公助の部分は減っていく中で、市民がどのように活躍していくかが重要です。行政に依存する市民の意識をなくしていくことと同時に、そのために行政や金融機関がどのように背中を押していくかを考える必要があります。行政がお金を出すのは良いが、徐々に減らして自立を目指すような仕組みがあっても良いのではないでしょうか。

【高津氏】
行政のソーシャルビジネス支援について、NPOに限らず、同様の取組を行っている株式会社にもアプローチをしてほしいと思います。

また、商品が売れなくなった時にどのように売っていくのかという質問ですが、これは市場原理の話で、欲しい人がいなければ物は売れないのです。延々と復興グッズを売り続けることを考えるのではなく、スタートした時にどのようにどこまで一緒に歩んでいくのかという出口を考える必要があります。「EAST LOOP」では、1年でプロジェクトを終えることを宣言して、参加者を募りました。その後、状況が変わっていなかったため2年に延ばしましたが、最終的には卒業して元の仕事に戻っていただくという条件に納得して参加してもらいました。しかし、状況は変わっておらず、元の仕事に戻れない人もいると想定していたので、次の段階として現地に事業を移管するために新しい会社を設立し、普通のビジネスとして現地で成り立つようにチャレンジしています。ビジネスで考えた時には、売りたいものを売るという発想ではなく、市場性があるか無いかに全て尽きると思います。市場性がないところにどんなに良いものを持って行っても売れません。それを見極めることが、ソーシャルビジネスと呼ぶ以上、重要ではないかと思います。

10年、30年後、ソーシャルビジネスに参入する人がどんどん増えていってほしいと思います。市民が東日本大震災を越えて自分の買い物が何につながっているか考える大きなきっかけになったので、いずれは自分の会社が不要になるような時代になってほしいです。ただ、これからソーシャルビジネスを始めようと思う人たちに対しては、ビジネスのスキルを磨いてください、そうでないと継続できないということを一番伝えたいと思います。

共助社会づくりシンポジウム in 関西 パネルディスカッションの様子の写真。。【中村氏】
どんな問題・人々でも、サービスが必要か不要か、グラデーションがあることは確かだと思います。その中で申し上げたいのは、予備軍についてです。例えば高齢者でも、予備軍と言われる元気な方々はお金、時間、ノウハウ、知識など、様々な資産を持っています。これをいかに社会的な資源としてうまく取り入れていくかが、これからのコミュニティビジネス・ソーシャルビジネスにとって大きな鍵だと思います。

ただし、この予備軍層だけが高齢者のケアをしたり、あるいは子育てやまちづくりをするだけでは、問題は解決しません。元気な若い人たちが給与を得ながら、軸となって活動し、予備軍層はその周りを占めていくという二層性で、コミュニティビジネス・ソーシャルビジネスを展開していく必要があると思います。

また、私たちもそうですが、企業や行政に場を調達していただく。運営経費についても、寄付金や助成金、補助金など、ミックスした資金で運用していく。全てがハイブリットなのです。違った文化に出会いながら、新しい地域の価値を生んでいかなければいけませんが、新しい価値を作るハイブリッドの場、プラットフォームを行政に整えていただきたいと思います。
【久保氏】
セミナー等はその都度テーマがあるので、ニーズと合致していれば案内させていただきます。また、定例相談日にも相談していただくことになります。しかし、その場で細かい法規制等について回答できないことがあります。そのような場合は、中間支援組織や神戸市につながせていただき、次のステップとして起業に向けた様々な準備、特に事業計画の作成については私たちのところで詳しく話ができると思います。

志・熱い想いということは金融機関にも通じるところがあり、やはり必要と思いますが、熱い想いを持っているだけでは融資できるものではありません。熱い想いを形、やはり事業計画などにしていただきたい。1年後、3年後、5年後に自分はどのようなソーシャルビジネスをやっているのか考えていただき、将来のビジョンを持って事業を継続していかなければなりません。一過性の取組ではないことを認識しながら、想いだけではなく、計画をもって形に表して金融機関に相談すれば、金融機関は応えてくれるはずです。我々も様々なノウハウを持っていますので、ビジネスの進め方のアドバイスやマッチングなどできるのではないでしょうか。
【森田氏】
ソーシャルビジネス支援をもっと市民に認知していただかなければならないので、行政は広報にもっと力を入れるべきです。また、ソーシャルビジネスの世界を拡大することで、特定の課題を解決したいという情熱のある人たち、特に若者の雇用の場を確保するための体制を作るべきと思います。切れ味の良いモデルを発想して育てていくのは非常に難しいですが、行政マンも、多方面にコネクションを持ち様々な人を積極的につなぐことができるようにならなければならないと思います。

少し遠い目線では、東京とは経済のパイが違うので、東京でうまくいったソーシャルビジネスが、必ずしも地方都市で成功するとは限らないケースもあります。その中で地方都市はどうすれば良いのかという問題があるので、やはりもう少し地域に目を向けていかなければなりません。小学校区単位で、住民とNPOが連携して、地域運営を行っていくモデルを作れないかと考えています。行政は、その運営が成り立つよう資金を提供することに意義があると思います。NPOと地域がしっかりと連携して、地域運営を行っていく世界を作り出さないといけない時代が来ていると思います。地域運営を、社会的企業やソーシャルビジネスの運営に長けたNPOが担っていく世界が作れないかと思っています。
【山内氏】
ソーシャルビジネスや社会的企業の議論では、古い世代はNPO、若い世代はソーシャルビジネスといった、世代論と進化論がありますが、私は必ずしもそうではないと思っています。若い方々は頭が柔らかく斬新なアイディアが出せるかもしれませんが、年齢を重ねると人生経験に基づくアイディアやビジネスプランが出てくるはずです。

また、寄附やボランティアでの活動は限界があることから、これらを捨てて事業性のあるソーシャルビジネスへの移行が必要であり、古いNPOは淘汰されて新しいソーシャルビジネスが出てくるという進化論的な話についても、必ずしも適当ではないと思います。ソーシャルビジネスは決して万能ではなく、ソーシャルビジネスに適した社会課題もあるし、寄附とボランティアで解決しなければならないタイプの社会課題も当然あることから、棲み分けがあるだろうし、両方とも重要です。

このシンポジウムを通じてソーシャルビジネスを真剣にやってみようという人が少しでも出てくれば我々としてはとてもありがたいと思います。

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