共助社会づくりシンポジウム 基調講演 1

基調講演 「共助社会づくりの推進に向けて」

共助社会づくりシンポジウム 基調講演 様子2

目次

  1. 共助社会づくりとは
  2. NPO等の役割
  3. 共助社会づくりの推進に向けて

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1.共助社会づくりとは

共助社会づくりにおいては、「全ての人材がそれぞれの持ち場で、持てる限りの能力を活かすことができる「全員参加」が重要」です。

それは、共助の精神によって「人々が支えあうことで活力ある社会を作っていく」ということです。共助の精神を持って多様な主体が参加するということがなぜ重要かというと、第一に、人や組織のつながりがしなやかな強さを持つ安定した社会の構築に寄与するということ。第二に、新たな市場の創出・拡大、雇用の拡大、寄付文化の醸成に寄与するということです。こうした内容は安部総理が所信表明演説、施政方針演説、成長戦略のスピーチで述べられています。

平成25年8月に公表した内閣府世論調査において、興味深い調査結果が出ていますので紹介したいと思います。調査結果では、「社会のニーズや課題に対して市民の自主的な取り組みが大切である」と考える人が9割を超え、また、NPO法人に期待する役割としては「人と人との新しいつながりを作ること」と答えた人が一番多くなっています。

また、「NPO法人の活動が信頼できるか」という問いには、平成17年の調査では約30%にすぎなかったものが、平成25年には約65%と2倍以上に増加しました。その一方で、「NPO法人の活動が信頼できる」という回答に比べて比率は少ないですが、「NPO法人の活動が信頼できない」という回答の比率もかなり増えています。平成17年と比べ、NPO法人の活動は市民の間に浸透していると言えますが、政務官からお話があったように、寄附の増加、活動の参加には結びついておりません。

行政の立場では、協働しようとする相手方のNPOで、中心的な役割を担う人が活動できなくなったときに、そのNPOが存続できるのかという点に不安を感じ、信用できないという状況があるのではないかと思います。

こういった内容について、ひとつずつお話ししたいと思います。

最初に「人や組織のつながりがしなやかな強さを持つ安定した社会の構築に寄与する」という点についてお話しします。リーマンショックの後、行き過ぎた市場原理主義について、批判が強くなってきました。市場機構は、非常によくできた制度ですが、市場機構では解決できない部分があり、それを市場の失敗と呼びます。大規模災害の復旧も市場機構の苦手な部類に入ります。市場の失敗を補完するのは、行政の役割ですが、行政も予算、人員などの制約でできないことがあります。これを政府の失敗といいます。行政が機能するには、それをベースとして支える社会が必要なのです。社会というのはつまるところ、人のつながりなのです。

人のつながりは、かつての日本社会にはしっかりと存在していましたが、昭和50年ぐらいには地方は過疎化、都市部は隣人の名前も分からないという状況になり、日本中のいたるところで、希薄化していきました。人のつながりを再確認するきっかけをつくったのが阪神・淡路大震災でのNPOの活躍です。

そして3.11の後、被災地でも人のつながり、「絆」ということが言われています。人のつながりということは人の交流・連携ということです。それは、新しい価値を生み出します。岐阜の飛騨に高山という非常に有名な観光地があります。山奥にある高山が発展したかというと、高山はかつて5つの大きな街道の交差点だったのです。そこで人のつながりが生まれていたことが大きな理由だと理解しています。

国土政策では、昭和37年の第一次から現在まで第六次まで国土計画が作られています。そしてNPO法ができて、平成10年に第五次国土計画が作られます。ここでは多様な主体がさらに具体的に書かれ、地域住民、NPO、企業等の多様な主体が参加して地域の国土を作るということがうたわれています。さらに平成20年、第六次国土計画、国土形成計画では、多様な主体は新たな公と呼ばれて五つの基本戦略の一つとなり、他の四つをベースとして支えるという大変重要な位置づけがなされました。ハードの整備と新たな公の育成が国土政策の二本柱になりました。

国土形成計画では新たな公という呼び方をしましたが、日本社会内で新しいものを作っていくということではなく、日本社会の良いところに光を当てよう、それによって地域の資源を活かして地域の内政的発展に結び付けようという目的がありました。「小さな循環」という言葉がよく使われ始めました。

次に「新たな市場の創出・拡大、雇用の拡大」するという点です。内閣府で荒い数字ではありますが、3.2万人、市場規模2400億人という数字を出しています。イギリスでは2005年時点で、雇用規模77.5万人、市場規模5.7兆円、日本の約23~24倍です。内閣府が同じようなフレームワークで伸び率を調べたところ、これも、荒い数字ですが、数年間で10倍に伸びていました。

 

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