共助社会づくりシンポジウム パネルディスカッション 【3】 – 1

パネルディスカッション【3】 「共助時代の社会貢献 – CSRやプロ簿のの未来像」

共助社会づくりシンポジウム パネルディスカッション【3】 様子2

目次

  1. 自己紹介と各企業の取組について
  2. 企業のCSR、CSVに対する姿勢(その1)
  3. 企業のCSR、CSVに対する姿勢(その2)
  4. 今後の共助社会づくりに向けて

ページトップへ

1. 自己紹介と各企業の取組について

【小川氏】
最初に私の自己紹介とパナソニックの基本的な考え方からお話させていただきます。私は入社以来、音響機器の研究開発、ネットワークサービスの事業部門で仕事をしておりました。私が社会貢献の仕事を担当し始めたのは2008年からですが、パナソニックを始め日本の企業が熱心に社会貢献活動に取り組んでいたことを担当して始めて知りました。自社の社員も知らないし、社会のお客様にもほとんど知られていないのだと気づき、今は積極的に発信しております。

パナソニックは創業者の松下幸之助が早い時期から社会貢献活動に取り組んでいたので、本業を通じて社会に貢献するということが基本的な考え方にあり、これは創業以来変わっていません。1970年代に松下幸之助は、社会情勢に応じて社会的責任は多岐に渡るが、どの時代も本来の事業を通じて生活の向上に貢献するということが社会的責任だと言えると申しています。そして、事業軸、地域軸、今の時代に合わせた形でサステナビリティーポリシーを公表し、CSRの大きなフレームワークの中で、企業市民活動を推進しています。新興国・途上国の問題解決、次世代育成支援・市民参画、社員のイノベーションマインドの向上、この3つの重点分野に深くかかわっているのがNPOとの協働です。

NPOの方々がたくさん御出席されているとの事ですので、NPO、NGOの組織基盤強化支援プログラムの紹介をいたします。このパナソニックNPOサポートファンドは、徹底的にNPO、NGOの組織基盤を強化するという目的に特化しております。これは、どんなに立派な積荷でも、泥船であったら沈んでしまう、しっかりした活動基盤があって初めて、個々のプロジェクトも発展していくのだという考えのもと、活動が一過性で終わらず、持続的・継続的に続いていくための取組として、中間支援組織と共同で、企画・運営をしております。

これまで、環境分野と子供分野で活動しているNPO/NGOの公募型の助成プログラムとして、2001年の設立以来、219件・2億6000万円の助成を行っています。設立からの10年間で組織基盤強化に実際に効果があったのかという点を、第三者に評価していただき、効果があったという評価が出ています。

【岡田氏】
私からは三菱地所株式会社がこの5年間、NPO法人えがおつなげてとパートナーシップにより進めてきた「空と土プロジェクト」をご紹介いたします。このプロジェクトは山梨県北杜市須玉(すたま)町益富(ますとみ)地区を拠点としています。増富地区は標高1000mを越える山村です。当時、耕作放棄率は62%、人口は507人中65歳以上が320人という、いわゆる限界集落です。

2008年に、地域社会との共生を主として、社会的課題の解決と事業の成長を両立させるような、当社グループらしい社会貢献活動をNPO法人などと連携して目指すことになりました。

NPO法人えがおつなげてが主催した限界集落ツアーに参加し、そこで自然環境や観光資源、そして、NPO法人えがおつなげての活動そのものに強い印象をうけ、2008年、当社とNPO法人えがおつなげての間に、都市丸の内と農山村益富地区との交流活動において多大に協力しあうという連携協定を締結しました。最初の3年間で農村部体験をして、人とのつながりを作り、商品開発、事業化に取り組み、次の3年間でプロジェクトをさらに拡大するというものでした。そして、その計画は実現いたしました。体験ツアーは昨年12月までに計50回1357名が参加しました。参加者は当社グループの社員、家族だけでなく、丸の内のオフィスワーカーやお客様にも広がっております。

また、耕作放棄地開墾ツアーを始めました。そこで開墾作業に汗を流し、自然と土地に愛着が湧きました。さらに、そこで収穫した米から純米酒「丸の内」が生まれました。今や丸の内のレストランやショップ、贈答品として活用されていますこの収益の一部が、えがおつなげてに寄付されています。それから、活用されないまま捨てられていた間伐材が三菱地所ホームの戸建て住宅の構造材なりました。林業者、加工業者、流通業者、住宅メーカーのサプライチェーンを2年かけて構築し、この仕組みで2013年のグッドデザイン賞を受賞しました。

また山梨県の商工会連合会と協働した丸の内シェフズクラブは、特色のある生産者を訪ねるツアーを企画、そしてメニューを開発し丸の内のレストランで提供する企画を続けています。このように、農山村に住む人と都市に住む社員、オフィスワーカー、マンション住民を、当社事業を仲立ちにして、商品開発を実現して、互いに元気にするプロジェクトを拡大していくという計画が着実に実現しています。

【太田氏】
キリン株式会社は、昨年1月に国内の3つの事業会社をまとめた総合飲料会社を設立いたしました。今日はそこでのCSVの取組みについてのお話をさせていただきます。被災地復興支援「復興応援 キリン絆プロジェクト」への評価が日経新聞の総合企業ランキング社会評価の部門で1位をいただきました。キリンにとってCSVとは、これまでのCSRを進化させ「社会課題への取組みによる社会的価値の創造」と、「企業の成長」を両立させることを経営コンセプトとしています。

CSVは3つのアプローチがあります。詳細は今回お話ししきれませんが、3つのアプローチを通じて「社会課題の解決」と「企業の成長」を両立させようとするものです。

キリンの取り組みは、NPOなどの色々な団体無くしてはありえません。1970年代から当時はまだいまほど人気のなかった日本サッカー協会への支援をしていました。大震災の際には、JFA・キリンスマイルフィールドという名で、被災地の小学校で521校、7万8000人ほどに授業を提供することができました。また、農業・水産業のハード支援、農業高校生への就業支援、地域のブランド再生・育成支援などを行っております。弊社の仙台工場も大きな被害を受けたのですが、被災地と一緒の痛みということでぜひ支援しなければということで続けてきました。

【椎川氏】
私は、国家公務員のOBで、公務員時代は国際消防救助隊を作ったり、アメリカのFEMAに研究員として言ったり、大学を作ったりしてきました。これまで培ってきた沢山の人脈、知識・経験をもっと広い世界で活かせないかと思い、社会とつながり、社会に貢献していこうと思いました。私は地域の活性化の仕事や地域の人材育成といったことをやってきましたが、小さな自治体や地域社会に行けば行くほど高齢者の方はとても幸せそうに暮らしているわけです。社会とつながって、社会に貢献していくことが幸せな人生を送る大きなポイントなのだろうなと思い始めて、公務員の方々にもお勧めしてきました。

10年ほど前NPO大山(だいせん)王国の理事として、地域づくりのお手伝いを始めました。観光は地域づくりそのものということで地元の方々が一生懸命やっている移住交流事業、ファンやサポーターを養成して、物産振興につなげていく活動をお手伝いしました。観光は地域づくりの鏡です。

また、山陰の県境問題という、とてもシビアな問題がありました。日本のもっとも過酷な県境をどうするか。消費者目線で県境を低くしていこうということで、20年ぐらい行ってきました。県境では、鳥取県が観光地図を作ると、島根県側が真っ白になっています。島根県が観光地図を作ると鳥取県側が真っ白です。大山のペンションなどでは、毎日、新聞が2部ずつ捨てられているという状況でした。これは何とかしないといけないということで、民間であれば県境のない俯瞰図を書いた観光地図を作りました。今は30万部ぐらいになっていると思います。民間の旅行雑誌が取り組むのもいいですが、もう少し公共的なセクターで何とかならないかということで、こういった取り組みを始めました。

今は地域に飛び出す公務員を応援してくれる首長連合というものがありまして、全国60人ぐらいの首長さんに参加いただいております。そういった活動については、後程、お話をしたいと思います。

【深尾氏】
ありがとうございました。ここまで、主に日本を代表する企業の皆さんの取り組みでした。一つ一つは少額でも合計すると大きな金額になる。一方で、NPOの悩みは、自分の団体もそのようなレベルに達することができるのか。そして、一つ一つのNPOが大企業と一緒に何ができるのかという点です。知り合いになるということと、共同事業が生まれて行くということはまた別の話だと思います。そういう点で、大企業の取り組みから学ぶことも大事ですが、NPOが地域で活動している際に、同じ地域企業の皆さんとどうつながるのかということのまなざし感がとても重要だと感じます。

私は、京都地域創造基金というNPOを支援するための財団を運営しています。企業との連携という取り組みでは、地域の居酒屋さんと連携して、カンパイチャリティという取り組みを行っています。例えば、普段400円で売っているビールを450円で売ってもらう。その50円を地域の団体に寄附する仕組みです。注文を取りに来た店員さんに「これは何?」と聞く、するとその店員さんがその仕組みを説明してくれる。その瞬間は、その店員さんがファンドレイザーになっているのです。

地域で寄附をする場所を作ることで、地域の中でお金が回る、元気にする、行くならあそこにしようと地域の中で選択が行われる場面・局面を作りたいと思っています。

 

1   2   3   4   次へ>>

ページトップへ