共助社会づくりシンポジウム パネルディスカッション 【3】 – 2

パネルディスカッション【3】 「共助時代の社会貢献 – CSRやプロ簿のの未来像」

共助社会づくりシンポジウム パネルディスカッション【3】 様子3

目次

  1. 自己紹介と各企業の取組について
  2. 企業のCSR、CSVに対する姿勢(その1)
  3. 企業のCSR、CSVに対する姿勢(その2)
  4. 今後の共助社会づくりに向けて

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2. 企業のCSR、CSVに対する姿勢(その1)

【小川氏】
CSRの取り組みを通じた変化として一番顕著なことは、社員一人一人が変わって、そしてそれが組織を変えていくという流れがあったことです。先程、紹介したパナソニックNPOサポートファンドで御支援をさせていただいたNPOさんに、今度はパナソニックの社員がプロボノとしてビジネススキルを使って応援していくという活動を3年前から始めております。その活動が社員の間で広まっていき、リピーターも増え、次は新興国(インドネシア、インドなど)にボランティア休暇などを使ってでも行きたいという人が出てきたので、2012年から新興国NGOプロボノというものを始めました。

社員は自分の休みを使って、自分で旅費払って、身銭を切っていくのです。ただ、このような環境を整えることが会社の役目です。BOPビジネス研究会など、若手が社内でワークショップなどを行っていました。地域に飛び出す公務員と同じように、飛び出すことで意識も変わり帰ってくる。企業の中でも、昔から青年海外協力隊というものをやってきましたが、期間が長すぎることにより、環境が違うため、帰ってきた人が、身につけた力を活かせる仕事がありませんでした。

そうであれば目的から変えてしまおう、要は現地に貢献しよう。それから、社内の新興国人材の育成も視野に入れて、社会課題を解決するための事業機会を開拓して行こうということで、一人一人のモチベーションが自分の仕事にフィードバックする、いい循環が生まれてきました。これは、現地に行くメンバーだけでなく、リモートメンバーという、現地に行くメンバーを国内でサポートするメンバーがいます。海外へ行く社員は、リモートメンバーに相談し、リモートメンバーの若手は、社内の上司や先輩に相談をし、上司のほうも非常に乗る気になって、就業時間後にもあれこれお節介を焼いてと、会社の中での助け合いから組織としての変化につながっています。

もう一つ紹介したいことが、プロボノと一緒にイノベーションワークショップというものを行っています。これは現地で活動されているNGO、NPOの方、要は社会課題に精通している方をゲスト講師に招いて、先進国、途上国の生活実態を理解しながら、その解決策を立案するワークショップです。これも20年ぐらい自主的に行っており、社員の企画立案などが高まってきています。

NPOサポートファンドを通して、NPO、NGOと企業との信頼関係というものがあり、プロボノやワークショップなどの社員参画の環境整備ができて、最後にCSV、自社の価値、社会の価値の双方を高める活動に結び付いています。

本業で社会の課題を解決していくのはもちろんですが、商流も新興国の代理店を通じてやっていたことを、NGOや財団の全く違う商流開拓をしていくことなど、いろいろな新しい活動に結び付いているというメリットもあります。

【深尾氏】
責任と義務の形で、取り組んだものを自社の価値創造や商品開発、従業員のモチベーション、教育に取り込んでいこうという姿勢がありました。組織にCSV本部という名前を付けているキリンの太田さんの方から、CSVの意味合いなどを、先ほどの話から発展させて話していただけますでしょうか。

【太田氏】
我が社ではNPOとの関わりは、東日本大震災後から始まりました。たとえば、JFAキリンスマイルフィールドだと社員がついていきます。元日本代表のサッカー選手が、小学生などに教えたりすると子供たちはいい笑顔をする。今まで外に出ることのなかった社員が、こういう関わりを見ると気づきがあります。また、社員も復興支援のための寄附を行ったり、ボランティアを行ったりということを3年間継続していきました。例えば、「氷結」です。初めは、地域の日本の食材を作ると地域活性化ができて面白いのではないかという点だけを考えていましたが、これを復興支援に役立てないかということに気づきました。それがCSVの商品として売り出すことができたりするようになりました。ただ、これはまだバリューになっていないものですから、CSVには結びついていません。

そして、福島につながるお弁当などを作ろうということで、トレーニングプロジェクトを始動させました。トレーニングセンタープロジェクトには、1億5千万円ほどかけて、農業を実際に被災した人で、事業として立ち上げたいと思っている、若い事業家を1年間かけてサポートしました。また逆に丸の内朝大学はお金を払ってプロデュースしたい人たちも出てきて、そのなかで生まれた案の一つでした。こういった話し合いなどで生まれたお弁当や食材などが、キリンとともにチェーンや量販店などに並べることで、だんだん自社のバリューをつなげることができる。サスティナブルに社会課題を解決していく手段の一つがCSVと考え、わが社はそちらに向けて舵を切ったのです。

【深尾氏】
今のお話を聞いて重要なのは、今までの商品開発という視点だと、自社のバリューが出ないと切ってしまうわけです。
そうではなくて、先行的な、ある意味でCSVの取り組みということで、まずそういった社会課題の解決や地域課題の解決を先行させていきながら、自社の強みを活かして、企業価値につなげていったり、商売につなげていくということです。今までの商品開発を一緒にやりましょうとしつつも、うまくいかなかったらすぐに切られたというような文脈とは、少し違う部分がある気がします。

さきほど、三菱地所から「空と土プロジェクト」を御紹介いただきました。取り組みとしていま申し上げたような点と共通する部分もあると思いますが、社内での評判などはどうでしょうか。

【岡田氏】
「本業につながっているCSR活動は長続きする」という社長の言葉のように、120年の丸の内の町づくりそれぞれで、時代の要請に答えてきたわけですが、新しいことに取り組んできた、イノベーティブなことをやってきたということで社会にとっても当社にとってもグループにとっても価値のあるものを作ってきた共通価値の創造がCSVだと思っています。最近、丸の内を変えてきたということで、町ブランドなどのCMにも取り組んでいます。

コーポレイトブランドにも取り組んでおり、そういう観点などもそういう活動が重要で社会貢献と本業の境目がなくなってきている気がします。組織内の変化という点では、先ほどの純米酒「丸の内」は当初2150本製造していたものが今は4700本製造しておりますが、グループの中から営業活動に使いたいという声が増えてきました。「丸の内」を持っていく中で、そのストーリーをお客様は話すことができるということで、社員へのモチベーションにつながっています。ツアーに参加したいという社員も増えてきており、CSVにも関わっていることを実感してもらうために、社員研修にも使うということにしております。

 

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