共助社会づくりシンポジウム パネルディスカッション【2】 – 2

パネルディスカッション【2】 「共助社会の寄付文化 – その生まれ方と育て方」

共助社会づくりシンポジウム パネルディスカッション【2】 様子3

目次

  1. 寄附の現状について
  2. 15年前と今を振り返って何が一番変化したか。
  3. これからの15年、何を見据えているのか。世の中の寄附に関する環境変化の予測等について

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2. 15年前と今を振り返って何が一番変化したか

【鵜尾氏】
阪神・淡路大震災の時に100万人を超える方々がボランティア活動に参加されましたが、かなり一過性と言われていました。

この15年を見ていると、社会の中でボランティアは圧倒的に身近になっていると感じています。特に、社会の空気が無意識の中でどんどん変化していると感じます。今回の震災では、8割近い方が何らかの寄附をしたという調査結果が出ております。弥生時代までさかのぼっても、日本人が一斉にこんなに寄附をしたことはないという気がしますし、日本社会はそのような体験を一つ共有したということだと思います。

以前、世界中で国際協力の仕事をしていましたが、アメリカやヨーロッパが理念型で、議論をして参考できる社会であるのに対して、日本は世界でもトップクラスの実体験型社会だと思います。震災のように、社会が一つ体験を共有すると、がらっと社会の空気やルールが変わっていくという社会なのではないかと思います。

NPOが大事だという理念だけではなかなか難しいですが、寄附の成功といった実体験を積み重ねることが、日本社会を変える上では最も近道だと思っています。実際、日本中で20代、30代の方々が魅力的なNPOを立ち上げて素晴らしい活動をするという状況が出てきており、身の回りの人たちが成功体験を持ち始めているということが日本社会の変化だと思います。
 
【岩附氏】
活動を始めた時はまだ学生でしたが、お金を封筒に入れて手渡してくださった方に、きちんと活動の報告や成功の感動を伝えられていませんでした。05年にNPO法人になりましたが、当時に比べ、自分自身が寄附のお願いをすることへの抵抗感が少なくなったと思います。それは、環境の変化と自分自身が納得して活動できるようになってきていることが大きいです。

アメリカでファンドレイジングの研修を受けた時に、寄附をお願いしないことは、相手にあなたが重要だと思っている社会課題の解決に参画する機会を奪うことだと学びました。決めるのは相手です。このような経験があって、抵抗感が少なくなりました。

【鵜尾氏】
寄附をしてもらうことのコツは、アスクとサンクスです。お願いすることと感謝すること、これがゴールデンルールの原則です。

【長岡氏】
15年前はNPO活動には全く興味が無く、法人を立ち上げる時にも、NPOが一番コストが安く、信頼度が高いと思ったぐらいでした。当時のNPO団体はボランティア団体の延長線上にあり、お金儲けしてはいけないのが当たり前といった世界でしたが、それではサスティナビリティは絶対にありません。継続していかない、無責任サービスを続けていくことはおかしいから、寄附を集めたり、収益事業を行うという方向に自分の中でも変化していきました。

10年前は見えない私たちを探してもらう時代だったと思いますが、今、NPOの存在は可視化されてきたと実感しています。今後は、自分たちのNPOのミッションに必要な人、その活動を必要としている人たちを、NPO側がしっかりと見つけていく時代に変わっていくと思います。NPOに参加してもらえる、もっとパイの広い人たちを、NPO側が見つけてもらうのではなくて、NPO側から見つけに行く時代に突入していかなければならないと思います。

【佐藤氏】
NPOから色々なセクターに飛び出して行って、出たり入ったりできるようになると面白いと思います。

6月に寄附税制が大きく変わりました。残念なことに、日本はイギリスやアメリカと比べて寄附税制が整っていないから、日本人は寄附をしないとの声を良く聞きますが、違うんです。アメリカやイギリスを凌駕するようなユニークな寄附税制となっています。

それにも関わらず、なぜ寄附をしないかというと、目的とお金の使途が分からないからです。NPO側に課せられる問題として、情報公開のルール作りが重要です。

また、寄附をする時の決済手段が日本は非常に乏しかったのですが、この15年間で、クレジットカードによるインターネットを使っての寄附決済がかなり広まりました。今後は、携帯電話を使っての寄附が簡単にできるようになれば良いと思っています。感動したらすぐに寄附ができるという環境を作りたいのです。

NPOへの寄附を集めるには、寄附者側の意識が低いなんて言っている場合ではありません。NPO側が積極的に発信しないといけないので、それを補完するようなアイデアやサービスがどんどん必要だと思います。

 

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